ロケーションからもらえる力

茨城

茨城を舞台にした朝ドラ「ひよっこ」のロケのときに、ロケ地を探すときにどういったことが重要なのか黒崎監督にお伺いしたところ、「そこで撮る意味がある場所や、作品の象徴的な何かがある場所があるとすごく惹かれるし、そこから思いもよらなかった物語が広がっていったりするような場所だとよい」とご回答を頂きました。なるほどと思ったのですが、茨城のロケ地である久野陶園さんと筑波海軍航空隊記念館はどういったポイントで選ばれたのか、またそこで撮影する意義などを教えてください。

黒崎

「ひよっこ」の時は、あの物語をゼロから作るところから県FCの担当者さんと一緒に、ロケハン以前のシナリオハンティングの段階から一緒に回らせてもらいましたよね。だからその時は特に何か決め打ちで探すというよりも「何が自分や作品を見てくれる人の心に残るのか?引っかかるのか?」というものをずっと探しながら、ぐるぐる茨城県の中を回らせてもらいました。
きっとそれは茨城だけではなく色々な所でそのロケ場所を見つけるためには、同じことをいつも繰り返していて、「映画太陽の子」のロケで久野陶園さんや筑波海軍航空隊記念館のお借りした建物でも、シナリオの狙いがあったので、それにふさわしい場所を探して、ロケ隊がずっとリサーチをしてくれていました。
入り口は少し違うかもしれませんけども、やっぱりロケーションから受ける影響というのは、その土地の力をどれだけ頂けるかどうかにかかっていると思うんです。何か目的に当てはめるために場所を探しているわけではなく、「そこで何に出会うことができるか」という気持ちが、監督もカメラマンも俳優陣もあるのだと思います。
スタジオセットの中で撮る良さもあるけど、ロケーションで撮る良さは、その場所で何を感じるかだと思います。やっぱり新鮮な気持ちになるんですよね。
その場所にお邪魔して、その日、朝早くからお邪魔して、準備をしながら、「その場所の風がどうだ」とか「気温がどうだ」とか「風が吹いている」とか、日によって全然違うわけじゃないですか、日の光や時間帯でも違うし。あの久野陶園さんもそうだったけど、太陽の日差しが変化して、それを「どのタイミング」で「どういうカットを撮るか」みたいなことも、すごく考えていますし、それを考え抜いたあげくに「当日雨が降っていた」ってこともあるのですけど(笑)。でもね、それはそれで大事なことかもしれなくて、その時に生まれるお芝居の気持ちがきっとあるはずなのでそれを感じられるように、できるだけ心をニュートラルにしておけるかどうかみたいなことがとってもロケーションでは大事な事かもしれなくて、今回の茨城でお世話になった2ヶ所でも、その1日の中での時間の移ろいを考えながら撮っていましたし、その雰囲気、空気感にも助けてもらったのを覚えています。

茨城

黒崎監督のお話を伺って、「ひよっこ」の時、谷田部茂役の古谷一行さんが「役者としてもこういう環境で演じられるっていうのはすごく幸せだと思うし、そう思える場所を皆が見つけて作ってくれて、そこで演じられるっていうのは本当に幸せなんだ」と言って下さったのがすごく嬉しかった事を思い出していました。場所からもらえる力があるという言葉には私たちもすごく励みになります。そういった観点から伺いますが、久野陶園さんのロケではどうでしたか?

黒崎

古谷さんの言葉も嬉しいですし、焼き釜のところではね本当にリアルに火を起こして、本当に焼いてくれたじゃないですか、何日もかけて。あの環境を作ってもらえるそのリアルさって何物にも変えがたくて、それは大変なことだっていうのも少しはわかっているつもりなのですが、というのはそんなことが実現できる場所は他にもいろいろ場所を探してもなかなか無くて、久野陶園さんはロケ場所としても素晴らしく、しかもその窯で本当にリアルに、焼くっていう行為が実現できる、それも皆の力で実現してくれる、そんな場所は他になかったんですよね。
窯を開けた時に高温の炎を見て、炎の色ってこんな色をしてるんだっていうのを初めてロケ隊は知ったし、それからイッセー尾形さんが窯を開けて薪をくべている10秒ぐらいの間に、すーっと温度が下がって「色がちょっと変化する」そんなリアルまで撮ることができました。あの時、窯がものすごく熱かったじゃないですか、カメラも役者も大丈夫かなと思いながらもイッセー尾形さんが、ほんとに熱い中でお芝居をやってくれましたけど、その高温な窯が、「もう一つの生き物みたいに燃えている」っていう、そういう中でのお芝居って、やっぱりそこにリアルがあるかどうかでずいぶんお芝居が変わっただろうなって思うんですよね。
そういうところがロケーションからもらえる力なんじゃないかなって思いました。

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