京都帝国大学の学生の日記

茨城

この作品は10年以上前に広島の図書館で若き日の科学者である、京都帝国大学の学生の日記を発見したところから始まったと伺っておりますが、どんなところに惹かれて作品にされようと思ったのですか?

黒崎

科学者の卵っていうべき学生が書いた日記を広島の図書館で見つけて、なんで京都帝国大学の学生の日記がここにあるだろう?と思い読んでいくと、京都帝国大学で原子物理学の研究をしていた学生たちが、彼らの研究を原子爆弾の開発につなげられないか軍から打診されていた、という事実を知ったんです。
彼らは科学が大好きないたって「普通の学生」でした。当時最新の学問に憧れて毎日生き生きと研究していたそのテーマが、戦争と結びついたことで方向性と意味合いが変わってしまった。それが現代に通じるリアルな「科学と人間」というテーマに繋がるなと思ったことが一番大きなきっかけです。
それともう一つ今日お話ししたいのは、その日記には、科学の研究のこと以外に「自分の妹が結婚した」とか家族のことも書いていて、その中に「真っ白な雲が青い空にポツンと浮かんでいて綺麗だった」とか、「比叡山の上に綺麗な雲が乗っかっていた」とか、それからね、「なんだかとってもいい天気で壁にカマキリがくっついていた」とか、そんな描写が時々出てくるんです。確かカマキリの描写は、まさに8月6日に広島に新型爆弾が落とされたらしいっていう日で。そのニュースを彼らが知るのは、当時のことだから2日位後になるんですけど、彼はその当日そんなこと全く知らないで京都の北の方の山の中を歩いていた。その時の事などが書いてあるんですけど、そういう時々に挿入される自然の描写がとっても気になって、当時の日本、京都の街は綺麗だったんだろうなって改めて思ったんです。
だからこの映画は戦争を描く映画ではあるけど、暗い映画じゃなくて美しい映画にしなきゃいけないんじゃないかって最初に思いました。当時の生活は大変だったのは間違いないけど、それは何か彼らが見ていた日々の風景は灰色の暗い毎日を見ていたわけではなくて、ちょっと目を上げれば、綺麗な景色がたくさん残っていたはずです。きっと京都のお寺や神社、そこに生えている木の緑も今見ているのと変わらず、綺麗な景色が広がっていた。それがこの映画にとって大事なんじゃないかなって思ったんです。

茨城

映画の中に出てくる色もとても綺麗だなあと感じていたのですが、暗い映画ではなく、美しい映画にしなければならない、という想いがそういう表現につながったのでしょうか?

黒崎

そうです、綺麗な色を作りたかったんですよ。
だから撮影のときもずっと「光が溢れているところ」を探しながら撮影をしていったし、最終的に映画の色を決める作業をしている時にも灰色の映画ではなくて、「柔らかい色が溢れている映画にしよう」とスタッフとも一緒に作業を進めました。

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