茨城県出身の映画監督作品上映のお知らせ

2007/9/7

本県出身映画監督の作品が上映されます。


監  督  門井 肇 (旧大洋村(現鉾田市)出身)
作 品 名  映画「棚の隅」
上映期日  平成19年9月22日(土)~10月5日(金)
       <舞台挨拶>
        9月22日(土)10:00からの回終了後には、
          監督 門井肇さん、
          主演 大杉漣さん、内田量子さん
        の舞台挨拶が予定されています。
       ※上映時間等は、上映館にお尋ねください。
上 映 館  シネプレックス水戸(Tel 029 – 300 – 7123)
入場料金  当日券 1000円(大学生以下・シニア 800円)
        前売券  800円


※上記上映のほか、鉾田市において『 映画「棚の隅」を上映する会 』が開催されます。
  上映日:平成19年10月14日(日)
  上映時間、鑑賞券等詳細は、鉾田市大洋商工会までお問い合わせください。
       (鉾田市大洋商工会  Tel 0291 – 39 – 2065 )


★監督の紹介
 門井 肇
1973年,大洋村(現鉾田市)生まれ。
鉾田一高卒業後,成城大学文芸学部に入学。映画研究部に入部し,多数の作品を
制作。
卒業後も制作を続け,1997年に制作した8mm作品「ささやかなこころみ」で
第2回水戸短編映像祭でグランプリを受賞。
その後,審査員であった本県出身のプロデューサーである武藤起一氏の主宰す
る「ニューシネマワークショップ」に参加。
今回,「棚の隅」で35mm劇場用長編映画デビューを果たし,全国10都市以上で
の公開の他,カナダ・モントリオール世界映画祭にも正式招待された。
鉾田市在住。


★作品の紹介
作品名「棚の隅」
○上映時間:81分 
○主演キャスト:大杉漣,内田量子
○内容:直木賞作家 連城三紀彦原作の短編「棚の隅」を映画化した珠玉の愛の
 名作。夫婦だった中年の男女が再び出会い,互いに新たなスタートを切るまでの
 葛藤を描く。
○公式ホームページ  http://www.tananosumi.com/


★これからも、茨城県出身の映画監督等の上映情報等をお知らせしていきます。
 ご期待ください。



=== 豆知識 ===

◆水戸短編映像祭
短編映像に焦点を当てた映画祭で、平成9年度にスタートし、今年度で11回目となります。短編映画のみに止まらず,CMやアートフィルムなど様々な映像を紹介する「招待上映部門」と、新しい才能の発掘を目的とした「コンペティション部門」があります。コンペティション部門では、グランプリ1作品,準グランプリ2作品程度を決定し、日本における監督デビューするステップとして,受賞監督が劇場デビューするまでをサポートしています。
今年度は、9月15日(土)から17日(月)の日程で水戸芸術館において開催されます。
水戸短編映像祭公式HP  http://www.mitotanpen.jp/

◆モントリオール世界映画祭
「新しい才能の発掘・育成と、映画を通じた相互理解の促進」を目的として、1977年にカナダのモントリオールでスタートした映画祭で、世界10大映画祭の1つになっています。毎年70カ国を超える国々から作品が出品され、これまで日本映画としては、『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年)で俳優高倉 健氏が主演男優賞を、『いつか読書する日』(2005年)が審査員特別賞を、奥田瑛二監督の『長い散歩』(2006年)がグランプリを受賞しています。今年は、8月23日(木)から9月3日(月)の日程で開催されました。
「棚の隅」は、“Focus on World Cinema”部門に正式参加作品として招待されました。

◆「棚の隅」プロダクションノート
~ 抜粋 ~
1 映画『棚の隅』の企画は,3人の出会いから始まった。
テレビを中心に活躍していた脚本家・浅野有生子,自主映画監督・門井肇,そして,書籍編集者・小池和洋。
肩書きも活動の場もまったく違う3人が,劇場用映画づくりの夢を叶えるべく,企画の検討に入ったのは,2003年冬。
その時点で,3人には映画界に知り合いはいず,製作資金のあてもなかった。
まったくのゼロから映画はつくれるか? ――挑戦というより,無謀な試みはしかし,プロデューサーを務める小池が直木賞作家・連城三紀彦の小説「棚の隅」を原作として提案したところから,少しずつ具体的な形になってゆく。
原作権の取得は誰に連絡すれば良いのか? 原作料は? そうした疑問を後回しにしてとにかく行動は開始された。
小池が連城氏の現住所を調べ,原作を映画化させてほしいこと,製作の体制はまったく整っていないことを正直に手紙に書いた。その返事は,連城氏本人からすぐに返ってきた。
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第一の壁は,こうしてクリアした。

2 原作は,1985年に発表された原稿用紙30枚ほどの短編。おもちゃ屋を営む主人公のもとに突然あらわれた元妻,その心の葛藤を淡々とした筆致で描く原作は,文字通り「何も起らない話」。このシンプルな物語を,どのように映画化するか?
原作の映画化である以上,原作をリスペクトし,その世界観を映像で再現するものでなければならない。しかし,主人公の内面描写がほとんどを占める原作を,どう映画というエンターテインメントに改変するか。初の劇場映画の脚本を手掛ける浅野は,そのプレッシャーに果敢に挑戦した。
物語後半の遊園地のシーンをオリジナルで創作し,主人公と元妻の対面を,観覧車のゴンドラという密室空間に設定して,緊迫したクライマックスを作り上げた。
脚本化の作業に2年が費やされ,決定稿は完成した。
原作者・連城氏は,完成した浅野の脚本を読み,「日常の愛の小ささが大きな意味を持つ短編が書きたかった。その想いを脚本家が代走してくれて実現できた。とてもデリケートな『隅』を持った,本当の味わい脚本だ」との感想を寄せた。

3 並行して,予算組み,スタッフ編成,キャスト交渉などの作業が行われた。
低予算でも映画がつくれ,回収も容易。スポンサー側からのビジネスプランを実現するために,直接製作費は500万円,宣伝費や興行費を含めても,1000万円以下という厳しい条件になった。
小池,浅野,門井の話し合いの中で,ヒロイン「擁子」役に,浅野が脚本を手掛けたテレビドラマに出演していた新人・内田量子の名前があがった。映画は初出演であるが,内田の凛とした佇まいと,勝ち気な目の力に,監督・門井は擁子を託す決心をする。

4 物語の柱となる主人公・康雄のキャスティングには,大杉漣の名前があがる。だが北野武,塚本晋也,黒沢清ら錚々たる映画監督たちの作品で圧倒的存在感をみせる名優・大杉漣が,この超低予算作品の主演を引き受けてくれるか? 
ダメでもともと,大杉の事務所をマスコミ電話帳で調べた小池が,オファーの連絡をとったのは,2005年6月のことだった。
やりとりは翌年まで続き,大杉が決断した。――「この話,引き受けさせていただきます」。
大杉は後に,マスコミの取材に対して語っている。「脚本の淡々とした雰囲気に,映画になった時の魅力を感じた。セリフで説明するんじゃなく,映像で説明するところが映画的だなと思ったんです。脚本を読んだ時点で,やりたい気持ちは固まっていました」。
こうして,映画『棚の隅』は,大杉漣主演作品として,急速に準備が進められていった。

5 スタッフも「この人と組みたい!」という想いを優先した。
キャメラマンは,『ヴァイブレータ』『blue』など秀作を連打している鈴木一博に手紙を書き,依頼した。最近は『小さき勇者たち~ガメラ』などの超大作もこなす鈴木だが,ローバジェット作品での工夫ぶりや,デジタル撮影の第一人者と評される技術の高さが, 『棚の隅』の深みのある画面づくりに大きく貢献している。
ちなみに,本作の撮影に使用された機材は,ビクター「GY-HD100」。高精細デジタルハイビジョンのコンパクト機種で,日本ビクター株式会社の厚意により提供されたもの。すでに『東京大学物語』(江川達也監督)など複数の劇場用映画の撮影に使われている。

6 撮影は,2006年6月1日クランクイン,13日にクランクアップした。
厳しい製作体制ゆえに,クランクアップを危ぶむ声もあったが,撮りこぼしも事故もなく,撮影は無事,終了した。
撮影隊の移動距離は2週間で1000キロにおよび,ローバジェットの制約をくつがえす,変化に富んだロケーションをおさめることに成功した。

7 映画『棚の隅』に華を添える話題の一つに,シンガーソングライター・榊いずみ(橘いずみ改め)が書き下ろした主題歌「つまらない世界」がある。
「失格」「サルの歌」「永遠のパズル」などのヒット曲で知られ,結婚を機に芸名を改めてリセットスタートをきった彼女が,得意のアコースティックギターを生かした,余韻のあるバラードをつくりあげた。
「つまらない世界」は,2007年3月リリースの新アルバムに収録されている。